研究から探す

自動設計による電磁ノイズ解消を研究。

あなたは友達と楽しくおしゃべりしています。そんな中、近くで工事を始められたらどうでしょう。とても話などできませんね。工事の騒音が会話音に干渉するからです。ではパソコンでオンライン授業やビデオ通話をしている最中に、近くで電子レンジを使うとどうなるでしょうか?

使用条件によりますが、場合によっては通話が途切れることがあります。これは電磁干渉と呼ばれ、電子レンジからわずかに漏れる電波が、無線LANで使う電波に干渉するため起こります。なおこの症状は、無線LANの通信方式を切り替えて電波の周波数を変えることで改善します。

このような電磁的な騒音(電磁ノイズ)による電磁干渉や誤動作などを防ぐため、電気製品を売る前には電磁ノイズの量をチェックし、基準値を超えている場合は売ってはいけないというルールになっています。

また、わずかな電磁ノイズで障害を起こす製品もいけません。いわば電磁ノイズの観点で攻撃力が低くて防御力が高いという望ましい状態を「電磁両立性」、あるいは「EMC」といいます。電気製品を売るためにはEMC試験に合格する必要があり、企業の方々による必死の努力がなされています。

ところがEMCを達成することは容易ではなく、一般的にはいろいろな対策をむやみに行い、合格するまで何度も試験を行います。これは身体で例えると、病気の真の原因がわからないので大量の薬をむやみに処方することに似ています。どんな症状に対しても適切な診断と治療を施す名医がほしいところです。

そこで私たちの研究室では、よりスマートにEMCを達成するために、優れた製品をコンピューターで自動的に設計する方法を研究しています。図はこの方法で得られたEMC性能に優れた電気回路です。機械系の構造設計分野で提案された「トポロジー最適化」という方法を応用しました。現在は情報系の技術である機械学習を応用した研究にも取り組んでいます。

私たちの研究室は電気電子系に属しますが、現代社会の諸問題を解決するためには、さまざまな分野の学問を幅広く習得することが有効だといえます。

関西学院大学工学部には四つの「課程」があり、複数の専攻科目を履修できる「マルチプル・メジャー」など、課程制ならではの分野融合的なカリキュラムを提供しています。特定の分野に閉じこもらない多角的な視点や柔軟な対応力を身に付け、多様性が求められる社会で活躍できる人材を育成するべく、日々研究と教育に取り組んでいます。

野村 勝也</span> 専任講師

NOMURA Katsuya

電力変換回路におけるEMC設計技術に関する研究、パワーエレクトロニクス分野への構造最適化法の応用に関する研究に主に従事。