研究から探す

パワーエレクトロニクス分野の技術を結集し、温暖化を抑制。

※この記事は2020年11月に神戸新聞に掲載されたものです。

二酸化炭素(CO2)排出による温暖化によって、荒れ狂うようになった地球。エネルギー自給率が1割に満たない日本-。

21世紀の最大の課題は、まさにこのエネルギー問題と言えるでしょう。菅義偉首相の所信表明演説でも「わが国は2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」との宣言がありました。

再生可能エネルギーを本格的に導入するには、エネルギーを電気の形で利用する「電動化」を加速せねばなりません。電動化ができると、これまで捨てていたエネルギー(位置エネルギーと運動エネルギー)を発電機で電気として回収(電力回生といいます)して使ったり、電池にためたりして、大幅な省エネが可能になります。ハイブリッド車がガソリン使用率の半減以下を十分に達成していることは、分かりやすい例ですね。

電車やバイク、エレベーター、船舶、飛行機などの輸送機器からさまざまな産業機器に至るまで、こうした電動化を取り入れることがとても重要になります。機器を制御した時の電力損失を大幅に低減することも大切です。

これらを解決するのが「パワーエレクトロニクス」と呼ばれる分野です。パワーエレクトロニクスの実現には新たな半導体デバイスの開発や、それを使いこなす回路技術などが必要になります。

同時に、再生可能エネルギーを上手に使う系統制御技術や低損失輸送、新たな電力伝送・分配、通信による制御など、電気電子の技術開発が重要になります。これらは温暖化を抑制するだけでなく、日本の産業界が再度世界を先導することにも役立つでしょう。

関西学院大学では、こうした21世紀の課題に対応すべく2021年4月、工学部に電気電子応用工学課程を新設します。現在、理工学部先進エネルギーナノ工学科で関連の研究を行っている5人の教員が移り、新たに大阪大学や企業から4人の教員が参画します。

左から、
後列:金子 忠昭教授、鹿田 真一教授、尾崎 壽紀准教授、葛原 正明教授
前列:大谷 昇教授、細井 卓治准教授野村 勝也専任講師大屋 正義准教授杉原 英治教授
(緑字新任教員)

この課題に特化した学科は、国内の他大学にはありません。数百年後の子孫が今を振り返って「石炭、石油をエネルギーに使っていた野蛮な時代もあったのか!」と言われるように、志のある若者と共に、21世紀の最大難事に向かっていきたいと考えています。

鹿田 真一</span> 教授

SHIKATA Shinichi

省エネを目指すダイヤモンド材料・デバイスの研究を行っている。