研究から探す

コロナ禍における新しい都市デザインを考える。

※この記事は2021年4月に神戸新聞に掲載されたものです。

今月、神戸三田キャンパスに建築学部が誕生しました。建築設計からまちづくりまでをひとつながりに捉えた、持続可能な生活空間の研究とデザイン教育の拠点を目指します。

その中で私は、都市デザインや都市再生についての研究教育を行っています。都市デザインというのは、人は街をどのように使っているのか、魅力的な街の特徴は何か、どのような空間を作ればよいのかを考え、提案する学問です。たとえば、都心の広場、水辺、公園、歩行者空間などのデザインや、街並み景観整備、都市再開発や都市再生の計画と仕組みづくりに取り組んでいます。

新型コロナウイルス禍によって、建物の屋外・屋内を問わず、都心の使われ方や空間デザインの考え方は大きく変わりつつあります。たとえば「ソーシャルディスタンス」の考え方は、集会施設や飲食施設はもとより、人の居場所すべてのあり方に影響を与えます。

都市の本質である「情報の発信と交換の場」がどのように変わっていくのか。その時に「みんなと出会いたい」「直接ふれあいたい」「賑わいの中に身を置いてみたい」という欲求をどのように満たすのか。都市デザインと建築デザインに大きな課題が投げかけられています。

今まで以上に広場や水辺などの「屋外空間のデザイン」と、オープンカフェ・中庭・テラス・屋上などの「屋外と屋内の境界領域のデザイン」への関心が高まるでしょう。また、テレワークが普及すれば、新しいオフィス空間がデザインされ、住宅設計にも影響を及ぼします。オフィスと住まいの間の様々なところに、ワークプレイスが生まれるかもしれません。「サードプレイス」といって、住まいでも職場でもない第三の居場所の可能性が広がります。

ところで、北摂地域にはいくつものニュータウンがあります。そこでは世界中の多くのニュータウンと同様に、社会の課題を先取りしたまちづくりが進められてきました。そして今、高齢化と人口減少が進む日本のニュータウンでは、その再生のための研究や提案が始まっています。

ポストコロナ時代のニュータウンでは、都心への一方通行ではない生活の場づくりが、再生のきっかけとなります。住宅と公共空間の再生、センター地区の再編、そして旧市街地や農村地域との共生が課題です。今年フラワータウンはまちびらき40周年を迎えます。この場所で、ポストコロナの時代にふさわしい再生の道筋を探り続けます。

角野 幸博</span> 教授

KADONO Yukihiro

人口減少社会における都心と郊外との共生の可能性についての研究に取り組む。